この日の午後、僕らはすでに二試合を終えた。練習試合なのでオーダーは毎回変更して良い事になっている。
基本的に3年生の2人は必ず出るので残りの3人を1、2年生で回す事にした。この二試合は、昨年全道に出ていない学校だったので初戦は澪、陽介、僕、祥太君、大輔君の5人、2試合目は塁、晃、祥太君、修斗、大輔君の5人。いずれも負けなしだった。
初戦の僕は返し胴と出小手を取って二本勝ちだった。
ただ今野先生からは、『相手を引き出すために攻めの姿勢が必要だ。そこからの組み立てを意識しろ』と指導された。
これは僕が成長するために必要な事だ。そこで他の学校の選手や、高校生の試合からヒントを得ようと空き時間は試合をずっと見ていた。
飛「響、もうすぐ3試合目始まるよ。今回は去年全道ベスト8の学校だから2、3年生で組むって先生が。」
響「うん、ありがとう飛鳥。あ、ジャージ預けて良い?」
飛「分かった、頑張ってね。」
響「もちろん。飛鳥もビデオちゃんと取っておいてくれよ。」
そんな言葉を交わし会場へ。
今「順番は衛藤、白石、荒井、橋本、安藤で行く。それぞれ課題を意識して試合に臨むように。」
「「「はい」」」
試合は先鋒の澪が鋭い出足で小手面を決めて先手を取ったが、直後に出小手を取られ追い付かれる。終盤まで有効打がお互いに無かったが澪が相手の隙を突いて引き面を決めて先ずは一勝。
次鋒戦は相手が1年生という事もあり、塁が相面二本で勝利。
中堅の祥太君は3年生同士の試合。相手チームのエースが相手という事でかなり際どい試合だったが、終盤に出小手を取って一本勝ち。三連勝した所で大輔君から、
大「チームの負けはなくなった事だし、響はさっき先生に言われた事意識して試合やってみろ。」
響「はい。行ってきます。」
そうして試合に臨んだ。
相手は3年生だ。前の試合を見たが守備の固いタイプでそれ程前に出てこない。はっきり言うと僕と相性は良くない。
試合早々、僕は先ずは間合いを詰めて小手面を打つ。相手は竹刀で受けて防ぎそのままつばぜり合いに。僕より力があるのでこの状況は不利になると思い、下がろうとするが相手は離れてくれない。困ったと思った瞬間、相手が手元を押さえ付け引き面を打ってきた。反応が遅れた僕は防ぐのが間に合わず一本を取られてしまった。
塁「まだ始まったばかりだ。時間はある取り返せるぞ!」
澪「ガンバ!」
僕は頷き、開始線へ戻る。
試合が再開されたが、相手は僕が打ちに行った所を受けたり、相打ちにして有効打を打たせない作戦を取っていた。試合時間も少なくなってきた。相手は無理をせず受ける事が増える。
もう捨て身で飛び込むしかない。そう思った僕は間合いを詰める。その時、相手の手元が面、小手を守るために上がった。
その瞬間に打突を逆胴に切り替え飛び込んだ。胴を打った音が会場に響く。
「胴あり!」
旗が三本上がり試合を振り出しに戻した。
澪「良いぞ響!」
祥「良い胴だ!もう一本!」
塁「ファイト!!」
僕はメンバーの方を見て、頭をリセットする。恐らく相手は残り時間考えてすぐに打ちに出るはず。正にチャンスだと思い集中力を高める。
開始線に戻り、主審の『勝負!』の声。
やはり相手は前に出てきた。『面に来る!』そう思った瞬間には身体が自然と返し胴を打つ体制になり、そのまま相手の竹刀を捌き胴を打つ。
会心の打突だった。再び旗が三本上がり逆転勝利を収めた。
礼をしてベンチに戻ると
今「よく取り返した。良い胴だった、が先に取られた面の場面は今後気を付けるように。」
響「はい。気を付けます。」
今野先生と話した後、視線を上げると飛鳥の姿が。
笑顔でガッツポーズをする飛鳥。
僕も小さくガッツポーズを返し祥太君の隣に座り面を外した。
大将戦は大輔君がきっちりと二本勝ちして、未だ負けなしの団体三連勝となった。
その後2試合行ったが、修斗と陽介がそれぞれ一本負けしたもののチームとしては全勝で1日目を終了した。僕ももう一試合出場して一本勝ちした。明日は去年優勝の岩見沢光聖中と準優勝の札幌北門中と対戦する。
全道に向けた前哨戦。気合いを入れなければ。










