そして金曜日。今日から男女剣道部合同で二泊三日の遠征に出発する。
土曜日の午前から試合形式での練習試合や合同稽古が行われるので今日の内に札幌に前乗りする事になっていた。
この遠征は今野先生が赴任してから毎年参加していて、札幌の剣連主催で行われる。朔北中は区域外だが、今野先生のおかげで声がかかるようになった。中学だけでなく高校の強豪校も同時に行っているので僕らにとっても勉強になるいい機会だ。
噂によると札幌の私立高の監督による有望選手のスカウトの場になっているらしい。
ちなみにうちの中学からも昨年の3年生が男女1人ずつ強豪校に進学したが、やはりこの遠征で声がかかったそうだ。
この街から札幌まではバスで3時間程。
荷物を積み込みバスに乗り込む。塁の隣に座ろうとすると、
塁「俺の隣はもう決まってるってさ。」
そう言って僕の後ろを指差すので振り向くと、ちはると日奈子がジャンケンをしている。…どうやらちはるが勝ったようだ。勝者と敗者の顔の違い…。
じゃあと澪の隣に行こうとすると
澪「お前の席はもう決まってるよ。さっさとそこに座れ。」
そう言って誰も座っていない席を指す。
首を傾げながら仕方なくそこに座ると、
飛「隣いい?」
と声をかけてきた飛鳥。…後で聞いたが事前に飛鳥が隣に座れるようにして欲しいと頼んでいたそうだ。
響「どうぞ。…いいのか日奈子の事。絶望感丸出しの顔してるけど。」
飛「うん。元々ちーちゃんとトイレ休憩の時に交代って約束らしいから。」
響「へぇ、そうなんだ。」
今「全員乗ったな。じゃあ出発するぞ。運転手さんよろしくお願いします。」
「「「お願いします!」」」
見渡すと、どこそこにカップル席が。
大輔君と佑美ちゃん、祥太君と日芽香、塁とちはる、澪と伊織、そして僕ら。
日奈子は陽菜の隣に座ったものの塁とちはるの様子をチラチラと見ている。ちょっと面白い。
そう言えばと思い飛鳥に聞いた。
響「伊織って澪が好きなのか?」
飛「う〜ん、どちらかと言うと憧れみたい。澪の剣道が好きなんだって。」
響「なるほどね〜。前に出る攻めの剣道は僕が見ててもいいなと思うしね。」
飛「響は待ちの剣道だもんね。相手が出たところを打ちに行くっていう。」
響「飛鳥も随分剣道分かってきたな。」
飛「バカにすんな。これでもマネージャーちゃんとやってるんだからな。それに小さい頃から響の剣道見てるし。」
響「そうだったね、ごめんごめん。でも飛鳥がマネージャーの仕事頑張ってるのは知ってる。真夏さんが褒めてたよ、剣道の事もマネージャーの仕事もしっかり勉強してるって。」
飛「そうだろ?もっと褒めてもいいんだぞ。」
響「はいはい。すごいすごい。」
飛「バカにしてるだろ。」
そう言いながら腕に拳をグリグリしてくる飛鳥。
響「痛いよ飛鳥。」
飛「響が悪い。」
響「…これからもよろしくね。マネージャー。」
そう言って頭をポンポンする。
飛「…うん。響も頑張って。」
響「そうだな。まずは練習試合でいい内容の剣道しないとね。」
そんな話をしていると、
祥「相変わらず嫁と仲良しだな響。」
と声をかけてきた祥太君。隣の飛鳥は少し顔を赤くしている。
響「日芽香とベッタリな祥太君に言われたくないで〜す。手繋いでるか、腕組んでるでしょその感じだと。」
祥「な、何言ってるんだよそんな事ねぇよ。な、日芽香?」
日芽「そ、そうだよやだなぁ響。」
響「顔真っ赤にして否定しても説得力ないっす。澪、写メ撮った?」
澪「もちろん、手ぇ繋いでるところバッチリ!」
祥「おい、何やってんだよ。」
日芽「澪〜。」
澪「日芽香後で送ってやるからな、写メ。」
日芽「…うん。お願い。」
塁「ちなみに澪と伊織も撮っておいたから。」
澪「何でだよ!俺まで巻き込むなよ。」
伊「………。」
塁「まあついで。未央奈に送っておこうか?」
澪「ちょっと待てって。」
塁「冗談だよ。あと響と飛鳥も撮ったけどね。」
響「………。」
飛「………。」
大「祥太余計な事言わん方が良かったな。」
佑「からかおうとするからしっぺ返し食らうんだよ。」
祥「へいへい。すんません。」
澪「あ、大輔君と佑美ちゃんの手繋ぎ写メもありますけど。」
佑「れ〜い〜?」
澪「佑美ちゃん、顔…怖いっす…。」
今「お前ら今日は別に構わんが、明日はしっかり切り替えて剣道に集中しろよ。」
「「「はい!」」」
やっぱり遠征は楽しい。ちょっと疲れるけど…。










